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千葉地方裁判所 平成7年(ワ)2453号 判決

主文

一  被告らは原告に対し、連帯して金二一七四万円及び内金九八七万円に対する平成六年三月二五日から、内金九八七万円に対する同年四月二七日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の、その一を被告らの負担とする。

四  この判決は仮に執行することができる。

理由

一1《証拠略》によれば、原告は訴外夏夫の替え玉であった自称夏夫に対し、平成六年三月二五日、三〇〇〇万円を貸し付け、その担保として、本件土地に別紙登記目録一1、2記載の各登記を経由し、同四月二七日、三〇〇〇万円を貸し付け、その担保として本件土地に別紙登記目録二1、2記載の各登記を経由したこと、原告は、右各三〇〇〇万円から、月二分の割合による三か月分の利息として各一八〇万円(合計三六〇万円)を天引して各二八二〇万円(合計五六四〇万円)を訴外夏夫の代理人と称する春夫に渡したことが認められ、原告が被告乙山に右各登記の登記申請手続及びその為に必要な原因証書等の作成を委任し、被告乙山は、本件契約書1及び本件契約書2を作成し、それを原因証書として、また、本件保証書を登記済権利証にかわる保証書として使用して右各登記の登記申請手続を行ったことが認められる。

2 また、《証拠略》によれば、訴外夏夫が原告に対し、別紙登記目録一及び二の各1、2記載の各登記の抹消登記手続を求めて提起した千葉地方裁判所平成六年(ワ)第七四八号事件、八七六号事件において、右各登記について、「代理権のない丁原春夫から、保証書、偽造された丁原夏夫の印鑑により改印手続を行って得た印鑑証明書、右印鑑を使用した委任状、原因証書を受領し、これを用いて為されたものであるから無効である」という理由で抹消登記手続を命じる判決が言い渡され、右判決の確定により右各登記は抹消されるに至ったことが認められる。

二 そこで、先ず、被告乙山の不法行為責任或いは債務不履行責任の存否について検討する。

1  被告乙山が司法書士であることは、当事者間に争いがない。

2  《証拠略》によれば、被告乙山が別紙登記目録一及び二の各1、2記載の登記申請手続をするに至る経緯として次の事実が認められる。

(一)  別紙登記目録一1、2記載の各登記について

(1) 被告乙山は、平成六年三月ころ、それまでに数回、抵当権設定登記等の登記申請手続を委任されたことがある金融業を営む原告から、抵当権設定登記等の登記申請手続とその為に必要な原因証書を含む必要書類の作成を依頼され、同被告はこれを承諾し、原告との間で、同月二五日に被告乙山の事務所に原告をはじめとする関係者が集まって右書類の作成と金銭の授受を行うことになった。

(2) ところが、被告乙山は、平成六年三月二二、三日ころ、それまで原告から依頼のあった登記申請手続を通じて顔見知りとなっていた戊田から、今回の原告の融資の件について、登記義務者の丁原さんは心臓が悪くてお宅の三階の事務所まで上がるのは大変だから、二四日の午後二時に土気の「すかいらーく」に来て登記申請書類を作って欲しいとの要請を受けた。

そこで、被告乙山は、債権者欄、債務者兼抵当権設定者欄、保証人欄、金額欄、利息欄等を空欄にした本件契約書1を作成し、二四日午後二時ころ、指定された「すかいらーく」に赴いたところ、そこには既に戊田、甲田、自称夏夫、それに自称夏夫の甥と称する春夫が来ていた。戊田以外の人とは初対面であった。被告乙山が席に着くと、自称夏夫は「ていはらあきお」ですと名乗った。被告乙山は、テーブルの上に「丁原夏夫」名義の印鑑証明書が一通置いてあったので、それを見て、「ていはらなつおさんではないんですか」と尋ねると、自称夏夫は「ていはらあきおです」と答えた。また、被告乙山は、印鑑証明書の生年月日が昭和二年となっていたので、自称夏夫の顔を見て年恰好を確認したが、年齢は七〇歳位で、不自然な点はなかった。なお、被告乙山は、戊田から、自称夏夫は運転免許証を持っていないと聞いていたので、そのことは尋ねなかった。

(3) 被告乙山は、以上のことから、訴外夏夫の替え玉である自称夏夫を訴外夏夫であると判断し、自称夏夫に予め用意した本件契約書1の債務者兼抵当権設定者欄と、委任事項として、右契約書記載の抵当権設定登記と条件付賃借権設定仮登記をなす一切の件と記載した委任状に署名捺印をしてもらってそれを受領した。また、その際、甲田から、「権利証が無いので、この保証書でお願いします」と、被告竹夫及び同梅夫が保証人欄に署名捺印しただけの保証書と同被告らの印鑑証明書を受取り、その後、右保証書の登記義務者欄に「丁原夏夫」と記載する等空欄となっていた箇所に必要事項を記載して本件保証書を作成した。

(4) 翌二五日、被告乙山の事務所に原告、戊田、春夫らが集ったが、自称夏夫は顔を見せず、そのことを不審に思った原告に対し、被告乙山と戊田は、昨日自称夏夫に会って抵当権設定登記に必要な書類は作成してある旨報告した。原告は、それ以上登記義務者の本人性を問題とすることなく、本件契約書1の債権者欄と、被告乙山に対する各登記をするための委任状に署名捺印をして、これを被告乙山に交付し、自称夏夫の委任状を所持していた春夫に三〇〇〇万円から月二分の割合による三か月分の利息一八〇万円を天引し、二八二〇万円を渡した。

そして、被告乙山は、右同日、右各書類を用いて別紙登記目録一1、2記載の登記の登記申請手続をした。

(二)  別紙登記目録二1、2記載の各登記について

(1) 被告乙山は、平成六年四月ころ、再び原告から、本件土地に抵当権設定登記等の登記申請手続とその為に必要な原因証書を含む必要書類の作成を依頼され、同被告はこれを承諾し、同月二七日に被告乙山の事務所に関係者が集まって右書類の作成と金銭の授受を行うことになった。

(2) ところが、被告乙山は、戊田から、同月二六日に関係者が被告乙山の事務所に集まるから登記申請書類を作って欲しいとの要請を受けた。そこで乙山は、債権者欄、債務者兼抵当権設定者欄、保証人欄、金額欄、利息欄等を空欄にした本件契約書2を作成し、右同日、戊田、春夫、自称夏夫が同被告の事務所に集った。被告乙山は、自称夏夫に予め用意した本件契約書2の債務者兼抵当権設定者欄と、委任事項として、右契約書記載の抵当権設定登記と条件付賃借権設定仮登記をなす一切の件と記載した委任状に署名捺印をしてもらってそれを受領した。

(3) 同月二七日、被告乙山の事務所に原告、戊田、春夫らが集ったが、被告乙山や戊田が訴外夏夫と信じていた自称夏夫は顔を見せず、又も債務者兼担保提供者となる訴外夏夫が来ていないことを不審に思っていた原告に対し、被告乙山と戊田は、昨日訴外夏夫に会って抵当権設定登記に必要な書類は作成してある旨報告した。原告は、それ以上登記義務者の本人性を問題とすることなく、本件契約書2の債権者欄と、被告乙山に対する各登記をするための委任状に署名捺印をして、これを被告乙山に交付し、訴外夏夫名義の委任状を所持していた春夫に三〇〇〇万円から月二分の割合による三か月分の利息一八〇万円を天引し、二八二〇万円を渡した。

そして、被告乙山は、右同日、右各書類及び本件保証書を用いて別紙登記目録二1、2記載の各登記の登記申請手続をした。

3(一)  ところで、被告乙山は、原告から抵当権設定登記等の登記申請手続とその為に必要な原因証書等の作成を依頼され、原告との間でその旨の委任契約を締結したのであるから、善良な管理者の注意をもって右委任された事務を処理すべき義務があることは当然のことである。

そして、前記2(一)で認定したとおり、<1>原告との間で、平成六年三月二五日に被告乙山の事務所に関係者が集まって本件契約書1等の抵当権設定登記等に必要な書類を作成し、金銭の授受を行うことになっていたにもかかわらず、戊田から、二四日にそうした書類を急遽作成して欲しいとの要請を受け、右同日、待ち合わせ場所に赴いたものの、同所に原告は来ていなかったことや、<2>被告乙山にとって、戊田以外の自称夏夫、その甥と称する春夫、それに甲田は、いずれも初対面の人であったこと、<3>被告乙山は、予定日の前日である右同日に急遽登記に必要な書面を作ることになった理由について、戊田から、登記義務者の丁原さんは心臓が悪くてお宅の三階の事務所まで上がるのは大変だからと聞いていたことから、予定日である翌二五日に自称夏夫が顔を出さないであろうことは容易に予測できたこと、更には、<4>甲田から、「権利証が無いので、この保証書でお願いします」と言って渡された本件保証書には、保証人として、面識のない被告竹夫及び同梅夫の署名捺印はあったが、登記義務者の氏名の記載もなかったこと等自称夏夫や春夫らの行動に不審を抱いてしかるべき事実があったのであるから、氏名や年齢を確認したり、自称夏夫の所持する印鑑の印影と印鑑証明書の印影が同一であることを確認するだけでは足りず、運転免許証やパスポート等写真のある証明書の提出を求めたり、そうしたものを所持しない場合には、保険証書の提示を求めたり、或いは住民票の写しなどの記載事項等を聴取するなどして自称夏夫が訴外夏夫と同一人であるか否かを確認すべきであった。更に、被告乙山は、自称夏夫が訴外夏夫であることを十分確認しないで本件契約書1を作成したのであるから、また、翌二五日には予測されたとおり自称夏夫が同被告の事務所に来なかったのであるから、同被告は原告に対し、二四日に右契約書を作成した経緯、自称夏夫を登記簿上の登記義務者である訴外夏夫と認識、判断した理由等を詳しく説明すべきであった。

(二)  しかるに、被告乙山は、前記2(一)(2)及び(3)で認定したとおり、自称夏夫が連火の点がなくても「夏夫」を「あきお」と自ら珍しい読み方をしていたことや、「丁原夏夫」名義の印鑑証明書記載の生年月日と自称夏夫の顔貌から推測し得る年恰好がほぼ一致したことから、自称夏夫を登記簿上の登記義務者である訴外夏夫と認識、判断し、免許証の提示を求める等通常本人性を確認するために行う確認手段を講じなかったばかりか、原告に対してそのような報告をせず、かえって、昨日訴外夏夫に会って抵当権設定登記に必要な書類は作成してある旨報告したに過ぎなかったことにより、原告をして、有効な抵当権の設定登記が為されるものと思い込ませ、三〇〇〇万円の融資を実行するに至らしめたものと認められるから、右の点に過失があったものと認めざるを得ない。

4(一)  また、平成六年四月二七日においても、前回のときと同様に自称夏夫が顔を出さなかったのであるから、被告乙山は原告にたいし、本件契約書2を作成した経緯等を正確に報告すべきであった。

(二)  しかるに、被告乙山は、そうしたことをせず、原告をして、有効な抵当権の設定登記が為されるものと思い込ませ、三〇〇〇万円の融資を実行するに至らしめたものであるから、右の点に過失があったものと認めざるを得ない。

5  したがって、被告乙山には、原告が被った損害を賠償する義務がある。

被告乙山は、司法書士は、登記申請をするに当たり、現に登記義務者として登記申請をする者と登記簿上の登記義務者とが同一人であることを疑うに足りる相当な事情がある場合にはそれを確認すべきであるとしても、本件の場合には、その場の人々の雰囲気、表情、態度等から、自称夏夫が訴外夏夫でないことを疑うに足りる事情はまったくなかった旨、また、注意義務は尽くした旨主張するが、前記3(一)<1>ないし<4>の事実からすれば、被告乙山は自称夏夫や春夫等の言動から、不審を抱いてしかるべきであったのであり、また、同被告が注意義務を尽くしたとは認められないことは、前記3(一)で認定したとおりであって、同被告の右主張は採用することは出来ない。

三 次に、被告竹夫及び同梅夫の不法行為責任の存否について検討する。

1  請求原因3(一)の事実中、被告竹夫及び同梅夫が本件保証書の署名捺印欄に署名捺印したことは、当事者間に争いがない。

2  《証拠略》によれば、被告竹夫及び同梅夫が本件保証書の署名捺印欄に署名捺印し、同被告らの印鑑証明書が被告乙山に渡されるに至った経緯及び本件保証書が本件各登記の申請に使われるに至った経緯として次の事実が認められる。

(一)  被告竹夫は不動産の仲介等を業とする有限会社甲川を経営している者であるが、平成五年一二月ころ、不動産ブローカーで、仕事上の付き合いもある甲田から、土気の土地(本件土地)を担保に金を借りたいという人がいるので融資の斡旋をして欲しいと依頼され、平成六年一月ころ、甲野とともに自称夏夫の甥と称する春夫らに会って土地に案内してもらい、その後、債務者兼担保権設定者になるという自称夏夫に会った。その際、自称夏夫は春夫の叔父であると言っていた。

(二)  同年二月下旬ころ、被告竹夫の兄を通じて株式会社丙山管財の代表取締役である丁川某、更に実際に融資を行う戊原某を紹介してもらい、同人らは、同年三月五日に本件土地を見て、これなら融資可能だということになった。

(三)  翌三月六日、被告竹夫は、甲田から、「権利証は『ばあさん』が所持しており、持ち出せないので保証書で登記をしたい」、「いずれは本件土地を売却する話になる。その際は丙川さんに売買の仲介をお願いするから」と保証書の作成を要請された。

(四)  被告竹夫は、自称夏夫とは一度会っており、面識もあることから、保証書を作成することを承諾し、自ら保証書の用紙に署名捺印したうえ、同被告の父である被告梅夫に保証人となることを要請し、被告梅夫は同竹夫に言われるまま署名捺印した。そして、被告竹夫は、同被告らの各印鑑証明書を用意し、平成六年三月一〇日、甲田、春夫と一緒に丁川、戊原らと会ったが、甲田が「保証書で登記したい」と言ったところ、戊原は「本人確認が出来ないのでだめだ」ということになり、結局、融資を断られ、被告竹夫らが作成した保証書は使われなかった。

(五)  戊原から融資を断られた甲田は、今度は友人である戊田に融資の斡旋を依頼し、右依頼を受けた戊田が原告に話を持ちかけ、本件の融資話となった。その後の経緯は前記1及び2で認定したとおりであり、本件保証証は、原告から自称夏夫らが融資を受ける際に使用された。

(六)  被告竹夫及び同梅夫は、本件保証書が原告からの融資に使用されるまでの間に、甲田に対しその返還を求めることをしなかった。

3(一)  ところで、不動産登記法四四条が登記義務者の権利に関する登記済証が滅失した場合には、登記申請書に登記義務者の人違いないことを保証した書面を添付すべきことを要するとしているのは、現に登記義務者として登記申請をする者と登記簿上の登記義務者とが同一人であることを確認することにより不正な登記がなされることを防止することにあるのであるから、このような保証をする者は、現に登記義務者として登記申請をする者と登記簿上の登記義務者とが同一人であることを知っていることが必要であるところ、そうした事実を知らないで保証書を作成し、その結果、誤った登記がなされ、そのために損害を被った者があるときは、右保証書を作成した者は不法行為により、その者が被った損害を賠償する義務がある。

(二)  そこで、本件をみるに、前記2(一)ないし(六)の事実によれば、被告竹夫は、自称夏夫と一度会って面識があるというだけで、自称夏夫と訴外夏夫が同一人であることを知らず、また、被告梅夫は、息子である被告竹夫から求められるまま署名捺印したもので、いずれも自称夏夫が本件土地の所有者である訴外夏夫であることを全く確認することなく保証することを引き受け、しかも当初の融資話が断られた後も、右保証書と印鑑証明書を預けていた甲田にその返還を請求することなくそのままにしていた結果、新たな融資先となった原告に対する抵当権等の設定登記の申請手続に用いられ、本件保証書が登記簿上の義務者である訴外夏夫を知る者によって作成されたもので、本件土地に有効に抵当権が設定されると誤信した原告が、自称夏夫らに、前記二1(一)及び(二)の経緯により合計六〇〇〇万円を騙取されたのであるから、被告竹夫及び同梅夫には、原告が被った損害を賠償する義務がある。

四1 原告の損害(弁護士費用を除く)

原告は、自称夏夫の代理人と称する春夫に対し、前記一1で認定した通り、合計五六四〇万円を渡しており、右金額が原告の損害(弁護士費用を除く)と認められる。

2  過失相殺

(一)  被告らの過失の内容は前記二及び三で認定したとおりである。

(二)  一方、《証拠略》によれば、原告は、戊田から「丁原夏夫」に対する融資の話を持ちかけられた後、戊田と一緒に本件土地を見分し、融資を実行することを決めたが、平成六年三月二五日以前に借り主兼抵当権設定者となる訴外夏夫に会うこともなかったこと、原告は、平成六年三月二五日、また、同年四月二七日に被告乙山の事務所に赴いた際に、来るはずの訴外夏夫が来ていなかったのであるから、融資を中止するか、融資の仲介をした戊田や、訴外夏夫の代理人と称する春夫に訴外夏夫と会うことを求めたり、或いは、被告乙山から、本件契約書1及び2や委任状を作成した際、どのように自称夏夫が訴外夏夫であることを確認したか等を詳しく聞けば、その確認の仕方が不十分であることは容易に解ったのであって、そうしたことにより少しでも疑いがあれば融資の実行を一時留保してその点の調査をすることもできたこと、更には、被告乙山は、本件契約1及び2の締結についての原告の代理人ではなく、右契約に関する最終的な責任は原告にあること、然るに、原告は、被告乙山や戊田の言を軽卒にも信用して訴外夏夫の替え玉である自称夏夫との間で各抵当権設定契約及び消費貸借契約を締結し、かつ、訴外夏夫の代理人と称する春夫に合計五六四〇万円を渡したのであるから、原告には重大な過失がある。

(三)  また、原告の損害は自称夏夫及び春夫による原告に対する詐欺によって生じたものであるが、原告の右(二)で認定した過失及び被告乙山、同竹夫及び同梅夫等の前記二及び三で認定した過失がなかったら、前記四1で認定した損害の発生を未然に防止することが出来たものと推測することが出来るから、原告、被告乙山、同竹夫及び同梅夫等の過失と原告の損害との間には相当因果関係がある。

そして、原告の過失と被告らの過失を考慮すると、その割合は、原告が六五パーセント、被告らが三五パーセントと解するのが相当である。

よって、被告らは原告に対し、原告が被った損害(弁護士費用は除く)五六四〇万円のうち、その三五パーセントにあたる一九七四万円の損害を賠償する義務がある。

五 弁護士費用

本件口頭弁論の全趣旨によれば、原告は、前記一2の千葉地方裁判所平成六年(ワ)第七四八号事件及び八七六号事件並びに本件訴訟を弁護士である原告代理人両名に委任し、着手金三〇〇万円、報酬三〇〇万円を支払うことを約したことが認められるところ、本件事案の内容、認容額等諸般の事情を斟酌すると、弁護士費用は二〇〇万円をもって相当額と認める。

六 まとめ

よって、原告の請求は、不法行為による損害賠償として、連帯して二一七四万円及び内金九八七万円に対する不法行為がなされた日である平成六年三月二五日から、内金九八七万円に対する不法行為がなされた日である同年四月二七日から各支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文、仮執行の宣言について同法一九六条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 川島貴志郎)

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